内藤廣先生の建築巡礼 & 都市再開発における建築的視点の重要性

昨日になりますが、内藤廣(ないとうひろし)先生の建築をいくつか巡ってきました。

内藤先生は、1950年生まれ。早稲田大学の建築出身。吉阪隆正(よしざかたかまさ)先生、菊竹清訓(きくたけきよのり)先生らに師事しました。内藤先生と言えば、海の博物館(1992年築)が有名で、いろいろな賞をさらいました。現在は、東京大学名誉教授、多摩美術大学学長です。

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千歳烏山の家

千歳烏山の家(ちとせからすやまのいえ)は、前から気になっていました。名称から推し測り、北烏山、南烏山を隈なく探し回ったものです。今回、巡礼をするにあたり、地元のものは外せないと思い、かなり気合を入れて検索し、ついに見つけることができました。

1997年築。いわゆる狭小住宅です。木造で、外装はガルバリウム、ガラスを多用しています。住宅ですので、中を見ることはできませんが、半透明のガラスを通じた透け具合から察するに、中と外は溶け合うように仕切られている感じです。

建築家は空間を設計するわけですが、無論、重要なのは、その後です。建築家が過渡の思い入れを排したであろうこの家で、住人は、どのような時間を紡いでいることでしょうか。。

ギャラリーTOM

千歳烏山から京王線と井の頭線に乗り継ぎ、神泉(しんせん)に来ました。歩くこと10分弱でギャラリーTOM(トム)に到着。

1984年築。高級住宅街の松濤(しょうとう)に佇む、おそらく、内藤先生の処女作。視覚障害者のための手で見る美術館とのこと。コンクリート造で、上部の鉄材が目立ちますが、その鋭い形状には内藤先生のメッセージが込められているようです。わたし的には、後述しますが、内藤先生の潜在的イメージの発露のような気がします。

渋谷の再開発

松濤から15分くらい歩き、渋谷に。ここから地下鉄銀座線に乗ります。駅舎は2020年にリニューアルしましたが、内藤先生の設計ということで広く知られています。実は、これは内藤先生の渋谷での仕事の一つに過ぎません。

内藤先生は渋谷全体の再開発を主導されています。東京大学在職時、建築ではなく、土木学科で教鞭をとられていました。建築と土木の関係は実に希薄なものですが、先生には、都市をも含め、三者の連携を築くべきとの思いが強かったようです。

さもなくば、都市側の利益優先の考えで進められ、渋谷の賑わいを失うことにもなりかねないところ、内藤先生だからこその強い意志で、デザインアーキテクトが採り入れられ、活気ある街の再開発が図られようとしています。デザインアーキテクトには、隈研吾(くまけんご)先生、妹島和世(せじまかずよ)先生、古谷誠章(ふるやのぶあき)先生らが参加されています。

渋谷の再開発については、改めて考えてみたいと思います。

とらや赤坂店

渋谷から三駅目の青山一丁目で下車し、草月会館を経て、とらや赤坂店に来ました。

内藤先生は、虎屋グループのいくつかの店舗設計に関わってきましたが、こちらの元々の店舗は建替えられ、2018年にリニューアルオープンとなりました。日本的と言えそうな形状の建物ですが、金属屋根に、ガラスのカーテンウォールです。

建物内は、木を多用しています。

紀尾井清堂

とらや赤坂店から歩くこと約15分、ニューオータニを経て、紀尾井清堂(きおいせいどう)です。

2020年築。一辺15mのコンクリートのキューブは4本の柱で3.6m浮遊しているそうです。開口は無く、外部に露出した階段が目立ちます。建物を覆うガラスを吊るすため、屋上から鋼材が伸びています。用途も決められておらず、とにかく自由な創作を任されたようです。アーティストの根源たる潜在的イメージのようなものがあって、それはもやもやしていると思いますが、内藤先生の場合は、具現化すると、このようなものになるのでしょう。

現在は、一般公開されておらず、実際に見たわけではありませんが、建物内は木が多用されているようです。内藤先生は、建築において、使う材料は とことん強く打ち出してくる感じですが、特に、木には、何らかの思い入れがあるような気がします。

ちなみに、こちらのクライアントにも、付き合いを通じ、大きな信用を置かれているようです。

今回は以上です。都内で見れる内藤先生の建築は、未だいくつかあります。また巡ってみようと思います。

それでは。

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