はけの家|場所の特性を顕在化する住まい

この記事のライター

Atelier momo

建築家、インテリアデザイナー
デザイン界のレジェンドたちにオマージュを捧げます。

目次

プロローグ

はけに建つ

「はけ(国分寺崖線)」は、およそ1~5万年前に多摩川の浸食作用によってつくられたもので、武蔵村山付近から世田谷あたりまで東西約25キロのグリーンベルトを形成している。「はけ」の周辺には、東京としては類のない豊富な樹木や植物が生い茂り、ところどころから湧き出る水が桜並木に縁どられた「野川」へと流れ込む。

敷地はこの「はけ」の中腹に位置し、周囲には武蔵野の面影を残す風景が広がる。

カツタ写真事務所の勝田尚哉先生が撮影(以下、同)
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順応と創造

計画にあたっては、この周辺環境を最大限に取り込み、場所の特性を活かした快適な住環境を生み出すことを心掛け、以下の3点をテーマに進めた。

分節化したボリュームとボイド

居住空間として適度なヒューマンスケールを保ちながら、時と季節の移ろいなど外部の気配が感じられるよう、ボリューム(住空間)にボイド(テラス)をはさみ、全体を分節化した。


開閉式ガラス戸によりサンルームともなる南テラス、北側には順光の庭となる北テラスを設け、これらボイドをボリュームの中に左右上下ずらして配することで、時々刻々と変化する陽光と多様な眺望を室内へと導いている。

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斜行軸線の導入

敷地は、西側に面する急勾配の坂に接道し、そこから高低差2m、幅2.8m、長さ15mの細長いスロープを登って建屋にアプローチする。


この東西に走るアプローチの斜行軸線を住居内にも延長し、連続させる(スロープ→ピロティ→階段室→北テラス→キッチン)ことで、土地と建物の一体化を図り、「はけ」のもつ場所の特性を活かして空間に変化と動きを与えている。

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周辺の環境に呼応する開口部

雄大な「はけ」の下に広がる景観に向けて、2階リビングルームには幅6.6m、高さ2.4mの大開口を設け、床・天井をデッキへと連続させて開放感のある憩いの場を創り出している。

一方で、ボリュームの分節により得られたコーナーには、周辺環境に呼応させながら出隅窓を慎重に配置した。コーナー柱のない2面開口のピクチャーウインドウからは周囲の風景が場所ごとに切り取られ、それぞれの住空間に多様な彩りをもたらしている。

以上です。ありがとうございました。

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