西さん
World Traveler & Storyteller
世界各地の暮らし、アート、グルメを、味わい深く語ります。
はじめまして、西です。世界を旅し、建築やアートに心躍らせています。そして、グルメに舌鼓。そんな感じで、日々、さすらってます。。
さて、今回ですが、初夏に訪れたフランスを紹介します。パリ〜南仏を巡る道中、暮らし、食、アートを堪能。”フランスの今”も感じてきました。それでは、ガイドブックに載らないフランス旅の始まりです。
パリ バスティーユからヴォージュ広場
久しぶりのパリは気温27度と、太陽の熱を感ずるが、快晴で心地よい。リヨン駅の近くのホテルに投宿後、歩いて10分のオペラバスティーユに行き、グノーのオペラ「ロメオとジュリエット」を観ようと思ったが、夏休み前の貴重な最後の公演のせいか、クラシック好きのパリジャンらしい服装や表情をした人々で溢れて、売り切れ。
気持ちを切り替えて、近くのヴォージュ広場をうろついて、目が漸く慣れてきたパリらしい景色をアイフォンに収める。
ボージョレのホームステイ
パリからリヨン行きの車窓からは、大好きな広々としてなだらかなヨーロッパらしい景色が続く。ボージョレ地区の人口1200人の小さな村シャルネには、それでもレストランもあり、パン屋さんも2つある。オーケストラも1つあって、アマチュアながら、合唱も交えて住民の人達が楽しんでいる。
今回、大きな庭を持った夫婦揃って獣医さんだというマーティ家が、夏休み中、3人の子供をお祖父ちゃんの家へ遊びに行かせて空いた部屋に、私を住まわせてくれることになった。明日の革命記念日を前に、村の隣人達が集って、土地に1つだけある葡萄畑で採れたブドウや、土地の山羊を絞って作ったワインとチーズ、そして、自家製のサラミなどを持ち寄って、夏の暑気を含みながらも乾いて輝かしい陽射しで夜の11時まで明るい南仏の宴を張ってくれた。
あのセザンヌの絵そのものの景色の中で、軽やかなラベルの音楽を聴いている様な愉悦感と幸福感を醸し出す"la joie de vivre"の時間。翌朝、ホストの奥さんがその美しい庭のテーブルで朝食をセット中。
リヨンの最高級レストラン メール ブラジエ
一品一品の料理の味、食感、盛り付けに創意が感じられるだけなら、東京のフランス創作料理店にもあるが、その一品一品がすばらしく、バランスがとれて、ときに奥深く、ときに軽やかで、まったくどう探しても文句のつけようがない。世界的に有名なポールボキューズよりも古い二つ星のこのレストランでは、コースが4時間以上に亘り、時計は翌日に跨った。そんなことは初めて!
リヨンの植物園は広大
周囲50kmの広大さ。酸素が多いためか、気持ちが落ち着き、優しい気持ちになる。夕方8時の陽の光がクッキリと。ワットーやマネの絵が思い出される。
ボージョレのシャルネの村人達の週末の集い
夕方7時から始まって、今10時。地元で搾った羊のチーズ、地元で採れた赤ワインなどが「無茶苦茶」に美味い。三日月も天に昇って、爽やかに涼しい夏の夜の宴はまだ続く。シャブリエの音楽が頭のなかで鳴り響く。
エクス レ バンの湖畔の僧院が美しい
ローマ時代の色濃いアルル
小さな旧市街を歩いていると、煤けた壁のそこここに古きローマの味が。夕方の7時に突然停電。理由は分からず。そこここでレストランも店じまい。どうしようかと思いあぐねたが、近くのスーパーが自家発電で営業中で、サンドイッチなどを並んで買って、隣りの矢張り自家発電で頑張っている混み合うビストロで冷たいビールを飲んで生き返る思いでいたところ。土地の人は慌てず騒がず。
ゴッホが描いた中庭の絵とその現在の風景。
あの夜空に輝く星を頂いたカフェの情景を描いた場所か。頭の中で鳴るのは「アルルの女」。
アルルの跳ね橋
今日はなんと言っても、ゴッホの「アルルの跳ね橋」。ホテルから歩いて15分と言う人と、タクシーでなければ無理と言う人。相変わらずの呑気さだ。歩いて行くことにして、地図を片手に歩き始めるのだが、いつまで歩いてもそれらしき所に出ない。聞いてみたら、反対方向に歩いてしまった。元来たその道、帰りゃんせ。で、漸く樹々の内に真っ直ぐに続く野中の道が。ここまでたどり着くのに、4人の人に道を尋ねた。さて、この道を歩いて20分という。
河に沿ったその道は、所々に船上生活者がいる以外に人影は無く、少し怖かった。
照り付ける太陽の光の中を歩き続けて25分。遂に姿を現した。
貧乏と闘いながらこんな所まで出掛けて来て、多分なんでもなかった橋を想像力で見事な構図の中、輝く色彩を用いて、洗濯する女たちや橋を渡って行く馬車など、人間くさいストーリーを加味して傑作を仕上げた。
ホテルに帰ってマネージャーと話す。生涯に1枚?しか売れなくて、極貧の内に死んだこの人が、その後、この街にもたらした富は今後も含めて計り知れないと。
アルルの国際写真展は各作家がそれぞれ会場を借りてオープン
作家達は凄く気さく。作品集は重いので、とてもスーツケースに詰めては帰れない。
多様化するフランス人
人々をみていると、それぞれがそれぞれで面白い。フランス映画をみるよう。
リヨンのホテル ダングルテールとカフェ ドゥ マゴ
夜8時半にリヨン駅に戻って、サンジェルマンのホテル ダングルテールへ。すっかり新装なって様変わりしているが、昔のクラシックな面影が残っており、良いホテルになっている。
わずかな朝食から何も食べていないので、歩いて5分のドゥ マゴに。
いつも変わらぬユニフォームでキビキビとよく働くボーイさん(と言ったら、今は怒られるかも)との会話を楽しみながら深夜の食事で生き返った思い。彼らはお客の冗談に付き合いながら本当によく働く。
食後のコーヒーとミルクの器のデザインの素晴らしさに言葉を失う。
それぞれがそれぞれであるここの人々にも、改装中のサンジェルマン教会の時計はそろそろ12時を告げる。南仏での早朝の起床からよく動いたものだ。
帰国
16日間、毎日道に迷いながら歩くのが楽しく、すっかり身体が頑丈になってしまった。
帰国の空港では、毎日冷たい雨が降っていたパリも、これから天気が回復するかの様な虹が。来年には、改修なるノートルダム。。
そして、いよいよ羽田へ。
今回、南仏の光を見るのが1つの目的だったが、帰国した東京の今の光と、光の光度自体はあまり変わらない。ただ、地平線や水平線のような大陸的な風景が持つ奥行きがない。東京に来て、空港を出るバスから見えた風景は、湿度も関係しているのであろうが、奥行がなくベッタリとしていて、寸詰まりの様であった。成程と膝を打った。
とっておきのフランス巡り、以上となります。いかがでしたか。
引き続き、世界各地の旅行記を綴っていきます。どうぞお楽しみに。