旧宮邸の探訪記です。前回に続き、宮様ご一家のプライベートスペースを見ていきます。
まずは、妃殿下寝室です。写真では、一部しか写っていませんが、丸鏡のついた白い扉や、布シェードの照明など、女性らしい雰囲気が感じられます。暖房のカバーは、妃殿下の下絵をもとにデザインされたそうです。妃殿下は、芸術の造詣が深かったようです。
参考に、当時の写真も掲載しておきます。
建物の南に位置するベランダは、日当たりがよく、庭園を一望できます。殿下と妃殿下の居室からのみ、出入りが可能な空間です。床には、黒と白の大理石が市松模様に敷かれ、腰壁には、グレーの大理石が張られています。これらは国産のものということです。モノトーンの色彩に加え、シャープな照明が付き、とてもモダンな空間に仕上がっています。ちなみに、サッシ、ガラスは当時からのもので、特に、ガラスは、ようやく国内でも量産化されるようになったものを用いているそうです。
続いて、妃殿下の居間です。浅めのヴォールト天井に付けられた印象的な照明も宮内省が手がけたものです。大きな鏡、暖房カバーの花のデザイン、造り付けの棚など、妃殿下の趣味、趣向が窺える空間になっています。
半円形のバルコニーには、国産のタイルで、当時、名を馳せたものが華やかに敷き詰められています。
陛下、妃殿下の寝室と廊下を隔てた北側に、北の間と称されるベランダがあります。暑い季節にご家族が団らんの場として使用されていたそうです。天窓が設けられており、ガラスブロックから外光が採り入れられ、より開放的な空間に仕上がっています。
柱のチーク材は、木目が真っすぐに通っています。床には、陶器の釉薬を施した布目タイルがモザイク状に張られています。腰壁には、溝を文様とするスクラッチタイルが使われています。素材や色合いを工夫し、涼やかな空間に仕上げています。
続いて、姫宮寝室です。サクラ材が多用されているとのことです。壁紙は当時からのものですが、今でも、光の当たり具合で、微妙なメタリックの輝きを放っています。一部しか写っていませんが、照明はガラスではなく、石を用いているそうです。柔らかい光が照らされています。
姫宮居間です。照明のデザイン、ピンク系の大理石を用いた暖炉、円形の鏡など、可憐な雰囲気を与えています。暖炉、暖房のカバーには、妃殿下がデザインした百合の花があしらわれているそうです。暖炉両脇の棚はモミジ材とのことです。
虹色の波形模様の壁紙は全体に明るい雰囲気を加えています。床は、ケヤキとメープルの矢羽根張りにローズウッドの縁取りがなされているそうです。
今回の最後は、ウインターガーデンです。温室として、3階最上階に設けられました。床に黒と白の市松模様に配置されているのは人造大理石で、腰壁には国産の天然の大理石が使われているそうです。素材の違いがわからないのは、当時の職人の施工技術の高さ故とされています。
当時、殿下がドイツ展でご購入されたマルセル ブロイヤーのチェアが置かれています。マルセル ブロイヤーは、バウハウス出身の建築家、デザイナーです。
以上、4回にわたり、旧宮邸を探訪しました。
いよいよ、次回は最終回になります。取りこぼしを拾うとともに、全体を総括します。
それでは、次回をお楽しみに。