東京都庭園美術館・邸宅の記憶 01|大広間、香水塔、大客室

昨日、風雨が吹き荒れる中、目黒駅から歩いて、東京都庭園美術館へ行ってきました。約35,000平米の広大な敷地は、都心にもかかわらず、緑にあふれています。

敷地内に、建築面積約1,000平米、地上3階、地下1階のRC造で、延べ床面積約2,000平米の建築物があります。旧宮邸として1933年に竣工したもので、その後、首相公邸、迎賓館として使われ、1983年に今の美術館になったそうです。

宮様ご夫妻は、当時、全盛だったアールデコに魅せられ、邸の新築にあたっては、日仏が総力を挙げて取り組むことになりました。室内装飾は、芸術家のアンリ ラパンに依頼するなど、建物全体が芸術作品とも言えるものが完成しました。アールデコを伝承するものとして、国の重要文化財に指定されています。

玄関を入ると、ガラスレリーフの扉があります。工芸家ルネ ラリックの作品です。元々の案は、裸体が描かれていましたが、日本側の要望で着衣に変更されたそうです。

玄関から最初に案内されたのは大広間です。壁面に張られたダークブラウンのウォールナット材は重厚な雰囲気を演出しています。天井は、格子の中に照明が整然と配置されています。それを映す鏡、暖炉、左右のアーチ形状も含め、室内はシンメトリーを構成しています。1900年代初頭までに流行したアールヌーボーは有機的な装飾が特徴的でしたが、それに代わって台頭したアールデコの幾何学的な装飾美を呈しています。

大理石に彫られたレリーフは彫刻家レオン ブランショによるもので、淡々とした装飾美の中に躍動感を添えています。

大広間に隣接する空間で、真っ先に目を引くのは、巨大な置物。アンリ ラパンがデザインした白磁の香水塔です。本来は噴水ですが、上部の照明で香水を漂わせたことからそのように呼ばれているようです。朱色の石壁、黒漆の柱、モザイクの床など、大広間の落ち着きとは対照的に、華やかさを演出しています。ただし、半円形ドームの天井の白漆喰は過多な彩りをうまく抑えています。

香水塔の脇に応接室があります。玄関から直接入ることができます。

香水塔の脇には、小客室も配置されています。アンリ ラパンの壁画に囲まれています。グリーン調で森の情景が描かれており、水の輝きがシルバーで表現されています。グリーンの石材により暖炉の色味も統一されています。

続いて、大客室。壁面上部には、同じく、アンリ ラパンが描く森の情景。工芸家マックス アングランのエッチングの施されたガラス扉、工芸家レイモン シュブによる扉上部の半円形の装飾、ルネ ラリックのシャンデリア、宮内省がデザインした暖炉や暖房のカバーなど、直線と曲線が奏でる模様は、アールデコの世界が表現されています。

ということで、今回はここまでにします。次回は、大客室と同様に、アールデコの粋が集められている大食堂から始めます。どうぞお楽しみに。

それでは、また。

東京都庭園美術館
https://www.teien-art-museum.ne.jp/

目次